Strawberry on the shortcakes
私には先生の時間を動かすことが出来なかった
先生のために私ができることは何もないんだ
「後悔なんてないよ」
思いとはウラハラに弱々しい私の声は未練がましく暗闇に響いてしまった
ふぅ~って
大きくため息をついた紗智が
「引っ越してもさ、ここから電車で2時間だし、一生会えないわけじゃないけど……」
紗智は一度
そこで言葉を区切ってから
「引っ越す前にもう一度、柊ちゃんと話してみたら?」
先生ともう一度
だけど
『良かったな』
保健室で私が転校することを喜んだ先生の笑顔が頭に浮かぶ
先生は私がいなくなっても
少しも寂しくないんだ
「柊ちゃんは絆のこと
すごく好きだと思うよ」
「そんなこと…」
「だって柊ちゃん
絆の困った時はいつだって
1番に駆けつけるじゃない」
ドキン………
「柊ちゃん。絆のこと、いつも見てるんだよ」
紗智は柔らかく微笑んでから
目を閉じて
「もう一度、絆から柊ちゃんに話をしてあげて
柊ちゃんはもう大人だから
きっと素直になるのにも時間がかかるから
絆から柊ちゃんに……
お願いね」
そこで紗智は黙りこみ
しばらくして規則正しい寝息が聞こえてきた