Strawberry on the shortcakes



部屋の中に段ボールが増えて


5日後には、お父さんより一足先に帰国したお母さんが来る



引っ越しは
1週間後に迫っていた

土曜日の夜6時過ぎ



【藤代】とプレートのついた
ドアの前



インターホンのボタンに人差し指を伸ばしては引っ込め



うろうろ、うろうろドアの前を行ったり来たりを何分繰り返しただろう



……急に押し掛けて迷惑になったら どうしよ


もしかしたら留守かも


どうしよ、どうしよ


先生の部屋の前をうろうろしてる私の横を


怪訝な表情を浮かべた若い男性が通りすぎる



………え~い迷っても仕方ない


私には
もう時間も猶予もないんだ!



 ピンポ~ン


震える指先で押すと


しばらくしてから


「はい」って
ドアの向こうから声がして



心臓はドキドキを通り越し


ドッドッドッと異常じゃないか?ってくらいの音になった



ドアが スィッと開き


濃いグレーのタートルネックのセーターにジーンズ姿の先生が顔を出した



私を見て目を大きく開き、明らかに驚いた表情の先生に



「や、やや約束!
約束果たしに来ました」


しまった。どもったぞ


先生は眉をしかめ
「約束?」と訊き返す


手に持ってた買い物袋を
ズィって先生の前に差し出し


「忘れちゃった?
ジャム入りカレー作る約束」



先生は少しきょとんとしてから


「ああ!」と うなずいた



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