Strawberry on the shortcakes




引っ越しの日


引っ越し屋さんが朝から
どやどやと やって来て



ほいほい荷物を運び出す手際よさに「ほう」と感心してしまった。



荷物が全て運び出され
マンションの前で
引っ越しトラックを見送ると



お母さんが「宇佐美の家に挨拶してから帰ろうね」と言った



「うん」と うなずき
見上げたマンション


今日から もう 私の帰る場所はここではない



先生が隣にいる
あの部屋に帰ることは
もうないんだ



胸がジーンと痛んで
鼻の奥がツーンとして
目頭が熱くなったから
うつむいて
ゴシゴシ目をこすった



さよならだ
本当の本当に



はぁ……と深く息を吐き
前を向くと



マンション前の道の先
50M向こうくらいに
コンビニの袋提げて
こちらへ歩いてくる先生がいた




  先生………………




先生も私に気付いて立ち止まる



微妙に離れた距離で見つめ合う私と先生。



隣にいたお母さんが私の袖を軽く引っ張り


「知り合いなの?」と
小声で言った



その声で ハッとして


「うん。あのね………」



そう私が口を開くと


「こんにちは。はじめまして」


先生は微笑みながら
こちらへ歩み寄った



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