Strawberry on the shortcakes




音も何も感じない


まさに夢の中にいるように


私と先生はただ呆然と
動きを止めていた。





しばらくして先生が「ふう」とため息をついて



やっと私の耳に
店内の騒音が戻ってきた



目を伏せ少しがっかりしたように先生は言った



「キミさぁ」


「はい?」


「なんか
変な磁石持ってるだろ?」


「じ、磁石?」


「じゃなければ、引力」


「引力?」


「だって、おかしいだろ?
なんで、こんな風に会うんだよ
お互い、どこに行くかなんて
知らなかったのに」



「わ、私が変な磁石で先生を引き寄せてるって言うの?」



先生は憮然とうなずいた



「…………先生。
先生、それって きっと」


ドキドキドキドキ
胸は一気に高鳴る



「それって きっと運命の赤い糸っていうんだよ」



言ってしまってから
カァァァァァァァァ……と
耳まで痛いくらい熱くなる



私が
こんな思いしてまで言ったのに


ギュッと眉をしかめ先生は


「赤い糸?」


訝しむように呟いた


ひ、ひどいよ~


そうだ。
先生は私と別れる道を選んで


心機一転、全てを新しくしたいんだもんね


どうせ、私には もう会いたくなかったんだ………




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