Strawberry on the shortcakes
結局、ホームセンターには
私の気に入る物が1つもなく
インテリアショップに先生を案内することにした
ホームセンターの自動ドアを出て駐車場をふたり並んで歩く
春の陽射しが優しく降り注ぎ
暖かい風が前髪を揺らす
先生は眩しそうに目を細め
空を見上げて
「…もう春だな」と独り言のように呟いた
私は
そんな先生の手をギュッと握り
「うんうん。春ですね」と微笑む
ちょっと驚いた表情で
私を見た先生の手のひらは
少し冷たかった
「そういえば絆
犬飼ってるの?」
私の手の買い物袋を先生は見た
「はい。先月、拾って。
すごく可愛いよ」
「ふ~ん。名前は?」
「藤くん」
「はい?」
「藤代先生の藤くんだよ」
「え~。なんか嫌だな」
先生は藤くんにあまり命令とかするなよって笑った
「………先生、
藤くんに会いに来る?」
ちょうど先生の車の前に着き
立ち止まる
先生は少し考えるように
視線を上に向け
「お互いの気持ちが変わらなくて絆のお父さんに殴られる覚悟が出来たらね。」
困った顔して笑い先生は
きつく私の手を握り返した
車に乗り込む直前
繋いだふたりの手の温度は
全く同じ温かさになっていた
END