あの男は私に嘘をつく
「な、なによ…。」






「別に??可愛いな、て。」







「はあ!!??」







「じゃあ、始めましょうか。」








なんなんだよ、こいつ…。さっきから、なんかふわふわしてて、全然掴めないし……。





ダメっ!!!!相手のペースに乗っちゃっ!!!!自分を持たなきゃっ!!むしろ、自分が振り回すぐらいの気持ちでっ!!!






私は買ってから、そんなに開いたことがない、綺麗な教科書を開き、持ってきたノートを横に開いた。




「橋本さんはどこらへんが分かんないの??」







「分かんないとこが、分かんない。」






「なるほど……。」








……いつもなら、こんなこと言えば、先生たちも諦めて帰らせてくれたのに……。
何悩んでんのよ…。
そんなに真面目に向き合う先生なんか、今までいなかったのに……。








工藤は顔を上げ、





「じゃあ、ここ1ページを解いてみてください。順に教えていきますから。」





工藤はくるっと背中を向け、自分の机で別のことをしだした。








ほんっと、意味分かんないやつ……。






でも、私は素直に問題を解き始めた。
…なんだか嬉しかったんだ。"先生"てものに、初めて出会った気がしたから。
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