あの男は私に嘘をつく
問題が終盤にいくにつれ、難易度が上がって解けなくなってきた。
そりゃね、基礎がないから、仕方ないんだけどね。




解けないから、面白くなくなってきた私は、工藤の背中に声をかけた。




「先生、何してんの-???」





「ん〜、ちょっと。」






「怪しい〜。」





そう言って、後ろから工藤の背中を押す。
工藤は……、裁縫をしていた。しかも、お守りみたいな。
私は思わず噴き出した。




「似合わなぁいっ!!!マネージャーじゃあるまいしっ!!やっば、ツボッたぁ!!!」




「もう、冷やかすなよ。」





工藤が若干顔を赤らめた。本当に一瞬。だから、次みたときに普通の顔してるから、なんだか…もやもやしてしまった。





…顔赤らめるとか、意外。だって…、あの新任挨拶のときじゃ、想像できないんだもん。



そのとき私は工藤の机に、写真が立ててあることに気がついた。
遠目だから、よく見えない。





「な〜に、これっ!!!」




「あっ!!!!」





そこには、工藤と…綺麗な女の人が仲よさ気に写っていた。
工藤の笑顔も、あのときとも、さっきとも違う……幸せそうな…笑顔。





胸がチクッとした。








私の後ろから工藤が写真を取り上げた。見上げた工藤は……、なんて言えばいいかな。
凄く……寂しそうな顔をしていた。
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