あの男は私に嘘をつく
家に明かりはついていない。
荒れた息を整えて、
暗闇の中、電気をつける
スイッチを探す。


部屋は電気一つで明るくなる。
だけど、人間の心はそうは
いかない。
こんなこと言う私も、
スイッチだけでは
心の明かりを灯すことは
不可能なんだ。


テーブルを見ると、
いつものお金と………。




えっ!!!
手紙っ!!??



私は紙を手に取り、
ゆっくりと表に返した。
プレゼントをもらったような
気持ちに似ていた。
たかが手紙。
だけどね、私にとっては
どんなネックレスよりも、
ふりふりの可愛い服よりも、
最高のプレゼントなの。







そんな…気持ちだったのに。









『電気代、光熱費の支払しといて。』










ただそれだけだった。










私はご飯も、お風呂も入らないまま、部屋にこもって、そのまま寝た。
なんだか、幸せな気持ちも、すべてが消えてなくなっていた。
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