あの男は私に嘘をつく
数学準備室は、工藤がうちにくる前に暖房をつけて暖めてあった。
寒いところから一気に、暖かいところへ来たもんだから、私の頬は真っ赤になっていた。









コートを脱ぎ、振り向いたら、工藤は手に紙をヒラヒラと揺らしていた。
……確認テストだろう。





「時間、欲しい??」






「いらないわよっ!!!」








「そ??じゃあ、始めるね。10分間だからね、よ-い、始め。」








……うわ、なにこれ…。昨日した???
あ、これは分かる。
えぇ〜、でも1番から分かんないし……。







「5分経ったよ。」







工藤の声を無視したいけど、なんだか重くのしかかる。
うそついたのがいけなかった。
やだ…、本当に分からない………。








「はい、おしまい。」






「うそっ!!!早過ぎだって!!!」






「これ以上かけて、分かるの??」








うっ……。何も言えない。







「採点するから、貸して。」







私はしぶしぶ答案用紙を渡した。丸なんてつけるほどでもない。ピンのほうが多いし、ピンばっかだもん。




工藤は答案を見つめたまま、私を見て、丸もつけずに渡した。
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