あの男は私に嘘をつく
キーンコーンカーンコーン



よし…、授業も終わったし、帰るかぁ~。


時計を見ると、まだ4時。今日もおじちゃんのとこ寄ってくかな。ヒマだし。



私が廊下に出ようとすると、担任のモジャモジャした腕が私の手を掴んだ。しかも、なんだか生温かくて…気持ち悪い……。


「ちょっ、なに??急いでんだけど。」


「お前、今日の日直サボる気か??」


「いいから、離せよっ!!!」


「恭子ちゃぁん~。僕と日直の仕事やるの嫌なの~??」


私の後ろから、脩二がおカマのような声を出しながら、私の顎を人さし指でなでた。全身に電気が走ったような感覚があった。あまりの気持ち悪さに、顎をなでる手くびを力いっぱい掴んだ。

「いぃっ、痛い、痛いっ!!!!」



「お前ら、イチャつくのはいいけど、早く日直の仕事やっとけよ。」




私は否定するのすらメンドくさくなって、脩二の腕を掴んだまま教室の中に引っ張っていった。





教室には、私と脩二しかいない。


日はそろそろ沈み、赤い光が窓からさしていた。
私はなにもしない脩二はほっといて、黒板を消していた。あのハゲ島林のせいで、黒板が消えにくい。あいつは力が強いから、黒板にこびりついてなかなかとれない。私は結構乱暴に黒板をゴシゴシした。
突然、脩二が口を開いた。



「なぁ、恭子。」


「ん~??なに??」



私は黒板のほうを向いたまま返事をした。


「あの工藤って先生のこと、好きなの??」



「……は??」




「好きなの??」



脩二がいつもとは違う真面目な顔で聞いてきた。夕日が放つ赤い光が脩二のわりと整った顔を照らし、コントラストを生み出していた。その美しさに少しだけ見とれてしまった自分を制して、脩二から自然なふうに目をそらした。
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