あの男は私に嘘をつく
脩二は俯いたままだった。どれくらいそうしていただろう。私は自分が言ったことを悔いた。


『友達』




だって、そうだもの。ほかに脩二を………、ほかの視点で見たことがないから…。



そのとき脩二が顔を上げ、いつもの調子で笑った。でも、その笑顔が逆に私の胸を締め付ける。




「なんてなぁ!!!そぉだよ、俺も恭子のこと大事な男友達だって思ってるよ!!」



「男ってなによ!!脩二のバカっ!!!」



私もいつみたいに脩二の頬を引っ張ったり、つねったりした。脩二もいつもみたいに痛がって、だけど抵抗はしないし、キレてたりもしない。
そのまま、いつものように一緒に帰って、家まで送ってくれた。




そう、"いつものように"





でも、なんだか違うんだ。







ホントにいつも通りとはいえないんだ。









無理やり自分の中でそう思いこんで、それ以上は考えないようにした。きっと脩二の言ったことに深い意味はないんだ。"友達"てことを確認したかっただけ……、きっとそう。もう考えるのはよそう。






『好きなの??』




私は………工藤を好き…なのかな。だって、出逢ってそんなに日が経ってないし、相手は教師なんだよ…??無謀だよ…。それにあんな意地悪な人、好きになったりしないもん。
先生じゃなくても、大人で優しくて、知的な人はいっぱいいる。
ただ…、少し近寄りすぎただけ。だから、脩二にもそう見えたんだ。好きとかじゃないんだ。



そう……、近寄りすぎただけ……………。
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