あの男は私に嘘をつく
「え、わ、あ、ごめんなさいっ!!」




「鼻、平気??」





なぜだか、私の手首を持って、なかなか離してくれない。
ここは廊下……。
皆が見てる気がして落ち着かない。
私はなるべく先生と関わりたくなかった。それは、前からそうだったけど、昨日の修二とのことがあって、尚更だった。






「だ、大丈夫だからっ、離してよ。」






「なんでこっち見ないの??」






先生が覗きこんでくる。






近いっ…。なんでこいつ、いつもこんなに顔近づけてくんのっ……。




私は顔を背けた。そして、必死で先生の腕から逃れようとしたけど、離してくれない。手が…汗ばんで、身体が熱くなってきた。






「別に意味なんてないからっ……。もういいでしょ??」





「ふ〜ん…。」







そのとき、修二が私と先生の間に割り込んで、弾みで掴まれた手首が自由になった。
修二はニコッと私のほうを向いて、





「ほら、売店行くんだろ。早く行こうぜ。」





「う、うん……。」





私は修二に促されるまま、廊下を歩いていった。







後ろが振り向けなかった。なんでかな……。私の今の顔を見られたくなかったんだ。
だって…、分かんないけど、寂しそうな顔をしてたから……。
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