あの男は私に嘘をつく
「橋本は??休みか??」





「保健室みたいでーす。さっきまでいたんだけどね。」






「……そうか。」






数学の授業もサボった。なんだか受ける気になれない。先生と顔合わすのが怖いってか、先生、私の心読んでそうだもん。だから……、会いたくない。





私は保健室のベッドの中でゴロゴロしていた。別に眠かったわけじゃないけど、目をつむれば自然と眠ることができた。









「……………とは送って帰りますから。はい、では。」






がちゃんっ






私のベッドを囲んでいたカーテンがゆっくりと開かれた。その微かな音と、人の声で私は目が覚めた。どれくらい寝たのかな。ずいぶん眠ったような気がする。





うっすら目を開けると、頬に温かいものが触れ、目が一気に開いた。






「大丈夫か??」




「せ、先生??」




「もう放課後だぞ、歩けそうか??」




頬から離れた手を私に差し出して、先生はニコッと笑った。なんだか、むしょうにイライラした。先生の差し出した手を払いのけた。
< 32 / 124 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop