あの男は私に嘘をつく
「大丈夫、一人で立てる。」



起き上がろうとしたとき、長い間眠っていたせいか身体が固まってよろけてしまった。
先生は私を軽々支えて…………、持ち上げた。



「ちょ、下ろしてよっ!!」




「なんで避けてるか言ったらいいよ。」




な、なんでって……。




私は覗き込む先生の顔から、とりあえず目をそらしたくて、別のほうを向いた。なんでっていわれても、困るし、理由って理由はないし………。




「ほら、言えよ。」




「理由なんて……、ない。」




「………理由がないのに避けてんのか??」




「………避けてないし。」




そのとき身体が浮き上がった。先生の顔がすごく……近くにある。





「ここでキスしたら言う気になる??」




「はっっ!!!??」



「キスされるのと、理由言うの、どっちがいい??」




先生は私の答えを聞かないまま、顔を近づけてくる。先生の唇は、もうそこまで迫っていた。
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