あの男は私に嘘をつく
寝室は広々としていて、一人で住むには広すぎるくらいだった。










先生を寝かせて、袋から看病するために持ってきたものを取り出した。









「あ、あのね、一応これ、持ってきたんだけどっ……。」








よくよく先生を見てみると、冷えぴたはデコにつけてあって、氷枕も、薬も全部揃っていた。









「あ…、あはっ!!全然意味なかったなぁ!!いろいろ…持ってきたんだけど…。」










先生は私の手を持った。先生の熱が直接伝わってくる。







「いや、嬉しいよ…。ありがとう。」











ゆっくりと身体が前に倒れる。先生が背中を押すからだ。風邪のくせに力、残ってるんだね。
唇が重なろうとしたとき、私は先生の胸元を優しく押した。











「ダメ。風邪、うつるでしょ??」











「どうしても……??」












熱のせいで潤んだ目が、私をドキっとさせる。ほら、先生はずるい。
また、懲りずに近づいてくるんだから。
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