あの男は私に嘘をつく
「何かあったんでしょ??」






「え??」









麗華姉さんがコップを手慣れたカンジで拭きながら言った。










「当たりでしょ??」










「……」











おちゃめな顔をして笑う麗華姉さんは、普段の綺麗なお姉さんには見えず、どっちかというと、同年代のような気がした。











「麗華姉さんにはさ…、忘れられない人とか…いる??」










「ん〜…、いるかな。」












コップを拭きながら、少し微笑みを浮かべて言った。











「……今も??」













「そうね。…でも、忘れられないとは少し違うかな。」











「え??」












「忘れたくない人…かな。」











「忘れたくない…人??」













オウムのように、同じ言葉を繰り返した。私には意味がよく分からなかった。
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