あの男は私に嘘をつく
――「…行ったか。」








「あら、聞いてたの??」











麗華姉さんが振り返ると、そこには壁にもたれかかってタバコを吸う、おじさんがいた。
器用にはいた白い煙の息で輪を作る。












「ガキが色恋なんて、全く百年早いっての。」










その言葉にふふ、と笑う麗華姉さんに、おじさんは軽く睨みをきかせた。










「なんだよ。」











「寂しいくせに。」












「何言ってんだよ。恭子が何しようが、俺がとやかく言う資格ねぇしな。」











またふふ、と笑い、おじさんに背を向け、グラスを拭き始めた。
さっきのような大きな声でなく、自信なさげな声が、後ろからついてきた。











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