あの男は私に嘘をつく
「分かりやすいんだから。」










「何がだよ??」











「こっちの話。」










麗華姉さんは、そのままおじさんの横を通り抜け、店を開ける準備を始めた。











店の中に渦巻く白い煙を、窓から出してやると、店の中が凄く明るくなった気がした。
大人が集まるバーを思わせないような…、まるで昼間のカフェのようであった。









おじさんはいきなり店の外に出て、かかっている札を裏返した。そこにある文字は、『CLOSE』。







「え??どうして??」











ヒールをカツカツいわせながら、やってきた麗華姉さんは不思議そうな顔でおじさんを見た。











「今日はやめだ。」












「どっか出かけようぜ、久しぶりに。普段、あんなに仕事やってんだし、今日ぐらいいいだろ。」











「でも、そんな急にっ……!!」








崩れた化粧を直し、香水をふった麗華姉さんは、もう準備オーケーであった。開店まで、あと1時間をきっていたのだ。












「うちは、気まぐれで有名な店なんだよ。」












そう吐き捨てた無責任なオーナーの後ろを、今までとは違う微笑みを浮かべ、歩いていった。
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