あの男は私に嘘をつく
「離しっ………!!!」







「ありがとう。」












アリガトウ……。一瞬言葉が認識できなかった。だって、たしかに私はひどいことを言った。言ったはずなのに、どうして感謝する言葉を聞いているのか……、全然理解ができなかった。











修二はただそれだけを言い残して、私から離れ、家に入っていった。
















こらえた涙は頬を伝い、足元に広がる暗闇に吸い込まれていった。この涙はどこへゆき、どこに辿りついて、幸せを得るのだろうか。…ううん、幸せなんか求めてはいない。







先に見える暗闇に始めから幸せなんて期待してないんだから。













たとえ地獄が待っていても、私は恐れずに闇に飛び込むよ。そのなかに忘れたくないあなたがいるのなら。









闇の入口まで案内してくれた修二に感謝をして、私は闇の中をかけだした。どこへいくわけでも、どこで落ち着こうと思うわけでもない。私がほしいのはあなただけ。








幸せなんていらないの。












あなたがほしいだけだから。
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