消える前に伝えたくて
少年の笑顔を見て、父と母は理解した。まだ完全に理解したとは言えないが、少年の笑顔が確かに告げていた。そこに飛房が居ると……。

「ありがとう、飛房。ずっと僕のそばに居たんだね。よし、どっちが早く学校に着くか競走だ!」

晴れ渡った空の下、少年は勢い良く山道を駆け降りる。
自然は、迷いの無い少年の心に歓喜の風を吹き、少年の背中を後押しした。

「そこに居るんだね、飛房」

少年の父は、少し離れた所からお墓に向かって声を掛ける。
お墓の前に座っている飛房を確認するために……。

「ありがとう」

飛房は少年の父と母にお礼を言うと、青い空へ昇って行く。

魂となった飛房は太陽の光りを受け、256色にも輝く虹の橋を空へと架けた。

『一緒に笑おう』

一人と一匹が誓い合うその言葉は、いつまでも二人の心に響いている――。
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