あじゃあじゃラブリー
受付の前を通ると 美由紀が声をかけてきた。

「あら?もう お帰り?」

「治療してやってよ。 治療代 なんとかするから。」

「保険効かないんだよ。わかってる?」

「仕方ないでしょ?!! 今も 病室で 脂汗かいて苦しんでるよ。
 鎮痛剤 処方してやってよ。」

「う・・・うそ・・・・」

そういうと所は まともな 受付嬢らしい。 私の連絡であわてて 受付の奥の
ナースセンターへと消えた。


数人のナースが 私の横を小走りで通り過ぎて行った。


この前は 吐血で 今日は 激痛かぃ・・・・

落ち着くまでは帰りたくても帰れない・・・・

暗くなってきた 病院の中庭をぼんやりみていたら 背後で声がした。

振り向くと 美由紀が あっこねーさんと呼んだ彼女が笑顔で立っていた。

【この人が 本当に もと 男性? 嘘でしょ? 男性だった 面影なんて
 無い・・・・】

私があまりにも 彼女を見つめていたせいか 彼・・・いや 彼女が苦笑いしながら
言った。

「私、なにか 変?」彼女が 普通にたずねた。


「えっ・・・・あっ・・・・」返事に困る・・・・

「私の事 美由紀から 聞いたんだ。」





「い・・・・いえ。」

私の方が しゃれっ気も無くて 男みたいだし・・・・

「彼は?」

「腹痛。」

「あら あら・・・・」

「ここの 病院薄情ね・・・・」

「なんで?」

「身元不明患者の 治療はしないんだ。」

「そんなことないよ。」

「じゃぁ、なんで 彼は 腹痛で苦しんでいるの?ドクターも
 呼ばないの・・・・」

「彼の意思なんじゃないの?」

遠い目をして 彼女が言った。

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