あじゃあじゃラブリー

ドクターの腕がよかったのか、　あいつの願いとは裏腹に手術は成功し、あいつは

　自分の願いが成就することなく生還した。

が・・・・

結構　あいつの死にたい願望は　根強いらしく・・・物は食べない　水さえも受け付けないで、体はどんどん衰弱した　ついには　点滴までも、自分で外すという暴挙にでた。

困惑したドクターが　私に愚痴った。

「恋人なんでしょ？なんとか　してもらえませんかね。手術してからも
　こんな状況で・・・せっかく　手術は成功してるのに・・・今のままだと
　命の保証しかねますよ。」

【そ・・・そんなことを　言われましても・・・・あの・・・・私　彼の恋人
　なんかではなく・・・・】

私も困惑したまま　あいつの病室に顔をだす・・・

白く乾いた唇をして　あいつは目を閉じていた。

「おっす！！　今日もハンストしてるんだって？」

「・・・・・・」

「ねぇ・・お水だけでも　飲まない？」

「イラネッ！！」

「死ぬよ」

「いいよ。」

「そうか」

「帰れよ。毎日　病院へ来てれば　男逃げるぞ・・・・」

「逃げるような男いないもん。」

「ふ・・・・で？　ひまつぶし？」

「暇でもないし、本音をいえば　命を削ってまで　現実逃避する
　馬鹿な男にも付き合っていたか無いんだわ。」


挑発的な私の言葉にあいつが　少しムッとした表情を浮かべた。

「ねぇ･･･女にふられたの　はじめて？」

「ふられてない・・・・」

「はぁ？まだ　現実逃避してるの？で、ストーカーのような真似までしたわけ？」

「ふ・・・しってるような　口ぶりだな・・・・ガセネタ新聞読んだんだ・・・
　何も知らないくせにさ。」

「そ・・・そうよ　読んだよ。あんた俳優の大出　旬なんでしょ？」

「そう・・・一発屋の　大出　旬。　そして　後輩の俳優に女を寝取られた男」

「超かっこわるい。」

「はっきり　言うじゃん・・・・でも、俺はストーカーなんかしてない。」

「あなたが　海に追い詰めたような事言ってたじゃない。」

「あの日さ････あいつ・・・俺に電話かけてきて　海が見たいっていったんだ・・・」

そういって　あいつが遠いまなざしを私に向けた。