一生かくれんぼ
「大将!ビール!」
「あいよ!」
大将の威勢の良い声が店内に響く。
やっぱり指名手配なんてされていなかったんだ。
春川隆行は大将がだしてくれたビールを飲んで落ち着いていた。
「春川くん。今日はおつまみサービスするよ!ちょっと待ってて。」
そう言って大将は店の奥に入って行った。
大将がサービスしてくれるなんて初めてだ。
さっきまで今日は最低の日だと思っていたが、今日は最高の日だ。
「そうだ!尾佐田の事を大将に話そう!どうせイタズラだし、笑い話しになるな。」
そう思い春川隆行は大将の居る、店の奥に向かった。
すると大将の声が聞こえてきた。
どうやら電話をしているようだ。
「そうです!指名手配されてる春川明良がうちの店に来てます!早く来て下さい!」
春川隆行の体が一気に固まった。
オレは指名手配されていたんだ。
春川隆行は急いで店を出た。
そして行き先も決めずに、とにかく走った。
ここにいてはまずい。
それだけが、頭に浮かんだ。