学園(吟)
「夜のお供に持っていけアル」

赤い下着を取り出して、俺の手に乗せる。

「えっとさ、俺が持ってても使いようがないんだけど」

俺は皮より実のほうが興味がある。

よって、洗濯した後の下着を盗む泥棒の気持ちはよくわからない。

「丞、お前、本当に上級者アルな」

「は?」

「脱ぎたてがいいなんて、オマセさんアルな」

そう言いながらも、照れ隠しなしで脱ぎ始める。

「ちょっと待て待て待て!」

脱ごうとしていた、吟ネエの両手を掴んで止めさせる。

「代わりはいらないよ!!吟ネエのリスバ姿を見れただけでもいいんだ」

「お前」

今の台詞で感動するかと思いきや、冷たい目線が刺さっている。

「私の物は受け取らないなんて、私に興味がないアルか」

「え?」

そんなアホな。

「体も必要ない、身の回りの物も必要ない、実は私に傍にいられると嫌アルな」

興味があるからリストバンドを渡したのに、すっかり忘れられてるぞ。

普通の女性なら、自分の脱ぎたてパンツを欲しがる男が傍にいたら嫌だろう。

でも、貰わないといけない空気になっているぞ。

何とか別の物で解決するしかない。

「違う!実は吟ネエの物で欲しいものがあるんだ!」

「ほう」

「このバッジが欲しいんだ!」

咄嗟に掴んだのは、机の上にあったコーラの文字が書かれたバッジだった。

取った瞬間に、自分でもこんなもの欲しいのかと思ってしまう。

パンツのほうが幾分かマシだっただろう。
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