学園(吟)
「それアルか」

吟ネエが一瞬戸惑う。

「欲しいのなら持っていけアル」

吟ネエの戸惑った顔は初めて見たけど、嫌な気分になった。

コーラバッジは、吟ネエにとっては大切な物なのかもしれない。

人によって価値が違うし、誰かから貰ったのであれば付加価値もついてくるんだよな。

「あー、自分がパン中だって事を忘れてたぜ。やっぱ、吟ネエのパンツが欲しいなあ」

バッチを静かに机の上に戻して、俺は禁断の世界の代物をもらう事にした。

「ほう、自分を隠していたアルか」

「ごめんごめん、この赤いの貰っておくよ」

「いや、今から脱ぎたて以外は却下アル」

さっき赤いのを最初に渡そうとしてたじゃないか。

吟ネエは即座にパンツを脱ぐと俺の手の上に乗せる。

人肌が伝わってくるが、どう喜べばいいんだ?

でも、吟ネエに対して嫌な気分にならないで済むのなら、貰っておこう。

もちろん洗濯はするぞ。

パンツを静かにポケットの中に仕舞いこみ、退散することにした。

「じゃあ、俺、行くよ」

本当はこんなことになるはずじゃなかったのにな。

「まあ、待てアル」

「え?」

今度は逃がすまいと肩を掴まれて振り向かされると、キスを頂く事となった。

吟ネエ、不意打ちが得意なんだよな。

「ぷは!」

「今日はミカンの味アルな」

朝食の後にミカンの飴を食べていたから、そのせいだろう。

「ガンヘヴを読みたければ勝手に持って行けアル。私は寝るアル」

吟ネエは肩から手を離して、ベッドに横になって目を瞑った。

眼鏡坊主のように三秒後には寝息を立てる。

「はあ」

吟ネエなら俺の意見を無視して次の行動に移りそうだったが、キスで留まってくれたようだ。
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