学園(吟)

生活

十月十日が過ぎ、吟ネエは無事出産した。

女の子である。

偶然にも、渚さんも同じ日に出産したわけだ。

渚さんの子も女の子であった。

その数ヶ月前。

吟ネエはお腹の大きいままで卒業式を迎える事になった。

他の人はよからぬ噂を立てていたけれど、真実は知っている人だけ知っていればいい。

卒業証書を受け取った吟ネエは相変わらずの表情を浮かべていた。

思い出に浸っているのか、それともこれからの事を考えていたのか。

俺には分からなかった。

卒業式が終わってからは、龍先輩や、他の先輩たちと一緒にどこかに遊びいったらしい。

少しくらいは問題ないだろう。

しかし、高校を出れば進学か就職を選ぶ事になる。

吟ネエの進路は出産までは何も出来ない事になっていた。

出産してからだと、働くくらいしかない。

俺自身も、すぐにでも働かなくてはならないと思っていた。

だが、俺の両親と渚さんは卒業するまではサポートするといって、断固として中退を拒んでいた。

確かに、中退と卒業では違う。

俺自身のためを思って行ってくれているのはよく分かった。

あと一年。

吟ネエや龍先輩達のいない学園生活を送るのだろう。

だからといって、別れが起こるわけではない。

卒業してからも、一緒にいる。

それが日常という物だ。

共にどこかへ遊びに行ったり、家でまったりしたりと、思い出を築いていくのだ。
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