学園(吟)
「一緒にトレーニングするアルか?」

このまま中に入れば、確実に食われるだろう。

「いや、飯食うよ」

フェロモンを発した女性を前にして、普通なら断らないけど意地で我慢した。

吟ネエは何もいう事なくドアを閉めて、再び携帯を開いて夢想し始めたようだ。

家にも男を呼ばずに一人でするなんて、逆に心配になってくる。

それなら、おもいっきし発散してもらったほうが、吟ネエらしくて良い。

「俺は何を考えてるんだ」

吟ネエらしさを取り戻すのなら、他の男に体を許してもいいというのか。

それは嫌だな。

何が正しいのかわからないままに、一階に下りてリビングに行く。

リビングにはお好み焼きを食べている渚さんがいた。

「起きたんですか?」

食べる手を止めて、お茶を飲んで俺の方に体を向ける。

「ええ、もうご飯できたんですか」

「すいません。お先に頂いてます」

「いや、いいです。ずっと寝てた俺が悪いんですから」

「食べます?作りおきがありますし、すぐ出せますよ」

「渚さんはそのまま続けて。自分で持ってきます」

キッチンにあったお好み焼きの作りおきをリビングの机の上にのせて、渚さんの前に座った。

まだ温かいので、先ほど作った事がわかる。

「いただきます」

「どうぞ」

渚さんは俺のコップにお茶を入れながら、俺が食べるのを見ていた。

口に入れると、蕩ける感触が口の中で広がる。

更に、ソースとの絡み具合も絶妙な世界を作り出している。

「うん、最高に美味い!」

「ありがとうございます。ゆっくり食べてくださいね」

美味しさのあまり、渚さんの忠告を無視するかのようにガツガツ食いまくってしまう。
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