学園(吟)
しばらくしてから、リビングに出てくる吟ネエ。

カッターシャツにノーパンではなく、Tシャツと純白のパンツだった。

「いい汗かいたアル」

凄い満足げな顔で俺の隣に座る。

「お好み焼き、食べますか?」

吟ネエの笑みを見て幸せを感じているのか、渚さんも微笑んでいる。

「是非ともアル」

喉が渇いているらしく、俺の飲みかけのコップに入ったお茶を一気に飲み干す。

別段、誰かのお茶だから飲まないというわけでもないようだ。

「はいはい」

渚さんは立ち上がって、キッチンに置いたお好み焼きと冷蔵庫からリンゴを取り出した。

しばらくして、剥かれたリンゴとお好み焼きがリビングの机に置かれる。

俺の前にもリンゴが置かれた。

「何か、あごで使ったようで悪いですね」

「りんご剥くの大好きですからいいんです」

この時点で、渚さんはリンゴの皮むきオタクまで昇進した。

リンゴを口に含みながら、隣を見ると胸が高鳴った。

何かを食べてる時の吟ネエの喜びの顔が、可愛らしく見えたからだ。

部屋から出てきた時の紅く染まった顔にも妖艶さがあってドキっとしたが、こっちは本当に不意打ちだ。

自分でも心境の変化が解る。

本当に吟ネエの事が気になっているんだろうな。

「渚、及第点アル」

「ありがとうございます」

渚さんの家族の位置はどこにあるんだ?

母親だというのに、立場が逆のように思えて仕方がない。

ここまで態度が大きいと、本当に料理の腕が気になってきた。

「吟ネエ、今度でいいから何か作ってよ」

「面倒アル」

俺の意見を一刀両断。

「そこを何とか頼むよ!食わないと死ぬに死ねない!」

吟ネエの出来る事をもっと知りたかったので、両手を合わせて頭を下げる。
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