学園(吟)
頭の中を真っ白にしないように、揉んだ数だけ素数を数える。

「2、3、5、7、11、13、17」

ただでは終わらない。

さっきまで一人で指圧マッサージをしていたのに、足りないというのか。

漏れる甘い声なんか聞きたくない。

いや、聞きたいんだけど今じゃない。

「吟ネエ、そろそろ、いいだろ?」

このままでは脳みそが砕けて、吟ネエの思惑通りに進んでしまう。

いつ襲い掛かってもおかしくないんだ。

「お前には男の性というものがないアルか」

手首を解放されると、すぐさま自分の近くへ置いた。

掌には柔らかい感触が残っている。

「でさ、誰から貰ったのか、ヒントをくれ」

胸のドキドキが苦痛でならない。

「そいつはお前がよく知っている男アル」

「俺の知ってる?もうちょっと詳しく頼むよ」

色んな奴がいすぎて、抽象的過ぎる。

「そいつは自分に抗い続ける大馬鹿者アル」

何てわかりやすいヒントなんだ。

解ってしまった。

俺はどこぞに出てくるような天然の鈍感ではない。

「俺か?」

「うむ」

しかし、上げた記憶が思い出せない。

「もうちょっと、ヒントを」

「次は本番になるアル」

水の中で見えるのは、股の部分を人差し指と中指で開く新世界だった。

「く」

後数秒で自分の意思とは関係なく暴発してもおかしくない。

とにかく、頭から血を抜こう。

「おらあああ!」

風呂の枠を両手で持って頭突きをする。
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