学園(吟)
「くうう、いてええええ!」

頭を離しても血が出ていない。

ただ、頭に痛みが走っただけだ。

「面白い奴アルな」

熱しやすく冷めにくい。

俺の体質はそうらしい。

いたって健康だから、良いというわけでもない。

とりあえず、吟ネエの腕を掴んで股の部分から離れさせる。

「やる気になったアルか?」

「いや」

段々、落ち着いてきたというか、沈んできてしまった。

「吟ネエとの記憶が思い出せないでいるんだ」

吟ネエからバッジを俺が上げたということを聞かなければ、絶対に解らなかっただろう。

「吟ネエの事が気になってるのに、今だけしか見てないってのが嫌なんだ」

「それは、他の男と遊んでいる私よりも、思い出の中の私を追い求めようとしているだけアル」

「違う。俺は全ての吟ネエが気になるんだ」

「余計な意地を張るなアル」

腕の中に包み込もうとしたが、俺は両手を掴んだ。

「まだ、俺は吟ネエの腕に包まれるような事を出来てない」

俺の目を見て、吟ネエの腕から力がなくなる。

「それに、体を惜しみなく見せてくれる吟ネエがどう思っているのかも解らない。でも」

本能を最大限まで抑制しても、全ての行為を封じることは出来なかった。

吟ネエの唇に自分の唇を軽く触れさせる。

舌を入れるなどのディープな事はしなかった。

いきなりだったので、吟ネエも自分の舌を絡ませる事が出来なかった。

「今の吟ネエも気になるのが嘘じゃないってことを信じて欲しい」

「包まれるのは駄目で、キスはするなんて、本当にわけのわからない奴アルな」

「身勝手でごめん」

今までキスをしていたから、重さの基準が変わっていたのかもしれない。

俺自身すらも、今の自分の行動がよくわからなくなってきた。
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