学園(吟)
ロベリアの表情は嬉しそうだ。

飼い主同然の吟ネエに懐いてるだけあるな。

しかし、猫って構えば構うほど遠のいてしまいそうなんだけど、ロベリアは違うような気がする。

「にゃあ」

撫でられ続けたロベリアが、しばらくしてから俺の足に擦り寄ってきた。

もしかすると、吟ネエだけに限らず、全ての人間が好きなのかもしれない。

変わった猫だが嫌いではなかった。

俺も座り込んで頭を撫でる。

見てるだけで愛くるしいな。

そういえば、ポケットにチョコが入っていたような気がする。

探ってみると、予想通り、中途半端に折っている板チョコがあった。

銀紙から取り出して、ロベリアに近づける。

しかし、吟ネエがチョコを横取りして、全部食べてしまった。

「不味いチョコアル」

演技ではなく、苦そうな顔をしながら唇についたチョコを舌で舐め取った。

「だったら、ロベリアに渡せばいいじゃないか」

チョコを食べたかったら、後で買えばいいのに。

「無知は罪アル」

「え?」

「それこそ、童貞がエロ本で得た知識が正しい事と思ってるくらい愚かなことアル」

「どういうことだよ?」

「お前はアチシのお付きを殺す気アルか?」

「そんな、チョコは駄目なのか?」

「人間がタバコを食べるくらい危険なことアル」

嘘だろ?

動物にとって、チョコレートに中毒性があるなんて知らなかった。

「にゃあ」

ロベリアは不思議そうな顔をしている。

殺されていたかもしれないのに、純粋な優しい眼差しで見てくる。

それが、とても痛いと感じた。
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