学園(吟)
「まったく、吟ネエ、少しくらい教えてくれてもいいのによ」

隣を見ると、乾が朝から弁当を食らっている。

「おいおい、お前もやる気あんのかよ。今はHRなんだから話を聞けよ」

「すまない。腹が減ったんだ」

謝るものの、乾は食い続ける。

どんどん説明する気がなくなっていく高井教師であった。

HRは順調とは言わないが、5分程度で終わった。

「葉桜、今度遅刻したらテメエは俺の授業の単位をなくすぞ」

「おいおい、暴君かよ」

「何言ってるんだよ。俺は優しい方だぞ」

乾のツケまでもこちらに回ってきてしまったようだ。

「という事で、先生方に迷惑かけずにしっかり授業受けろよ。特に葉桜ー」

「へーい」

「火の粉は自分に降りかかってくるんだぞ。そこらへんわかっとけよ」

「承知しましたよ」

朝っぱらから説教ほどテンションが下がるものがない。

しかし、俺が悪いんだから、歯向かうのは筋違いだし良い事がない。

高井教師はテンション低く、自分の授業を行うために教室から退出した。

変わりに、地理の女教師が入ってくる。

整った顔の美人な教師で、朝生千鶴という。

必要最低限の事しか言わず、とても静かだ。

チャームポイントはポニーテールだろうか。

「授業、始めます」

前の続きから始まり、黒板に白い文字と図を描いていく。

いつも思うのだが、図にするのが上手く、描くのが早い。

しかし、字は少女チックで丸いのだ。

何か、リアルな絵と丸文字が並ぶと、どこぞの遺跡に存在する石版やら遺物に思えてくる。

説明も余計な事を言わずテキパキと進めていくので、解りやすく無駄がない。

皆も朝生教師の時は、静かに話を聞いている。

聞き逃すのがもったいないとかね。
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