学園(吟)
教室はおどろ恐ろしい雰囲気に包まれている。

「おい、乾」

やっとのことで、後ろで食べている乾の姿に気がついた男性教師。

「お前、俺のいう事聞いていたか?」

「聞いてた」

「なら、授業内容もわかってるな?」

「ああ」

「じゃあ、こいつの代わりに読んでみろ」

「See you in my dreams」

「ほう、別の事をしている割にはしっかり出来ているな」

乾は弁当箱を閉じて、教科書を見始めた。

腹が空いていたから、飯でも食わないとやる気が出なかったのかもしれない。

しかし、飯を食いながら授業に集中するって、どれだけ便利な脳みそしてるんだ。

「だが、お前の行動は周りの人間にも影響が及ぶ。今度、余計なことをしていたら許さん」

乾は聞いているのか聞いていないのか、教科書を見つめたまま黙っていた。

最後に話していた二人の元へ行き、説教が始まる。

俺に与えていたような殺気立ったオーラを放っていたから、二人ともすくみあがって授業どころではなくなっていた。

ちなみに、男性教師の名は『加藤 六郎(かとう ろくろう)』だったような気がする。

確か色々な武道も習っているんだったっけな?

自分に厳しく、他人にも厳しいという評判がある。

さっきのを見てれば、少しくらいは納得できるんだけどさ。

「じゃあ、再開するぞ」

朝生先生の時とは違う静けさが教室の中に広がっている。

恐ろしい目に合いたくない一心で、集中している生徒がほぼ全員だ。

乾という一名を除いてはな。

俺も面倒事はごめんなので、加藤教師の話はしっかりと聞き始める。

英語が嫌いではないのだが、教師のせいで楽しいと思えないんだよな。

しかし、嫌な授業ほど長く感じるし、眠気も襲ってくる。

寝るわけにもいかないので、シャーペンの芯を手の甲に刺す。

痛みに耐えつつ、眠気に耐えつつ、何とか乗り越えた。
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