学園(吟)
三時間目、四時間目をソツなくこなす。

頭の中で腕と足の生えたトマトと吟ネエが腕を組みながら、回転して踊っている。

起きているのに魘されている気分だ。

乾は俺より練り飴を食べていたのに、平然と授業を受けていた。

ダラダラした展開の中で、待ちに待った昼休みが到来。

教師が退室したのと同時に、ダッシュで吟ネエの教室に向う。

風よりも速く、学食に向う奴らをかき分けて、待ち焦がれていた世界へ。

3年の教室前で、中に龍先輩の姿を見つけた。

俺を見つけて、静かな足取りで近づいてくる。

「息を切らして、どうしたのじゃ?」

「はあ、はあ、吟ネエは、どこに?」

教室を見回すが、吟ネエの姿がない。

「3時限目までは座っておったのじゃが、帰ってこんかったのう」

「そう、か」

空気のように軽かった体が、海の底に沈んでいくように重くなる。

「吟に何か用じゃったか?」

「用ってほどの事じゃないですよ」

休憩時間中に会いにきとけばよかったんだ。

どこにいるか予測を立てないと。

体育倉庫の扉は壊したから、あそこで話し合いは出来ない。

隠れられるような場所って、どこかあったか?

そうだ、京阪乗ってトイレへ行こう。

「何の用事もないのに、わざわざ入り口まで来てもらってすいません」

「かしこまらんでもよい。吟が帰ってこれば、伝言をしておくが」

「いや、いいんです」

俺は頭を下げて、龍先輩と分かれた。

「頼むよ。吟ネエ」

しかし、トイレといっても結構な数がある。

女子トイレも含めるとやる気をなくしそうだ。

そもそも、女子トイレに入ること自体が問題だろうが。

もし、トイレに忍び込んでいるところを女子に見つかれば、日頃と生理のストレスで袋叩きのたらい回しにされそうである。
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