学園(吟)
吟ネエの私服は、ブラジャーの紐が見えるくらい襟口の開いたシャツを着ている。

パンツはシャツによって隠れているので、何を着ているかわからない。

その吟ネエが何も言わずに部屋の中に入ってくる。

そして、俺の肩を掴むと、そのままベッドに押し倒した。

急の事だったので、力を入れることすら忘れている。

「丞もやっぱり男だったアルな」

肩を押している手には力が篭っている。

「いや、これには深い理由は、ないけれどさ」

垂れている髪からはほのかなシャンプーの香りが漂っている。

その他には女性のいい匂いが、男心をくすぐる。

「人のパンチーを眺めるとは、いい趣味アルな」

「違う。下着を片付けようと思ったんだよ」

「勝手に私の部屋に入ってアルか?」

「吟ネエがいるかどうか確かめようとドアを開けたら、この状況を見てさ」

「ふうんアル」

全く信じてもらえない。

ほとんどが嘘なので、信じてもらえないのも仕方ないけどな。

「まあ、良いアル。昨日から溜まってるから、少し相手をするアル」

吟ネエは男のような台詞を平気で言う。

キスをするために顔が近づいてくる。

胸の高鳴りはマックスで、このまま流されてもいいかとも思った。

だけど、違った。

吟ネエの性欲も満たせればいいかと思ったんだけど、やるべき事があるんだ。

流されるだけでは、何もかもが終わってしまう。

「吟ネエ!」

肩に置いた手を何とか振り解いて、俺は吟ネエの両肩を掴んで体勢を立て直す。

「俺は、起きた時から吟ネエに会いたかったんだ」

今ある本心を告げる。

「会ったついでに、体のコンタクトを取ればいいアル」

「違う!会いたいのは吟ネエに渡したいものがあったからなんだ」

ついでに持ってきていた袋を背中の後ろから前に出す。
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