学園(吟)
原形

悠久

優しい風が部屋の中に吹き込む。

起床した時には、時計の針は夕刻を指していた。

ベッドの上で寝ていたという事は、運ばれたのだろう。

何とも情けないものである。

しかし、関連付けにより、大きな収穫があった。

「思い出したぜ」

過去に俺が吟ネエにいった言葉。

小さい頃から好きだという気持ちがあったからこそ、今も好きでいられるんだな。

いや、本来ならばビッチだという事を知れば、気持ち的には萎えるんだろうけどな。

でも、やっぱり婿になりたいという気持ちはあってだな。

まだ付き合ってるわけでもないのにな。

吟ネエの気持ちも解らないし。

ただ、悩んでいても仕方がなく、立ち上がる。

「にゃあ」

俺の部屋のクッションの上には、ロベリアが腰を下ろしていた。

「お前、俺の傍にいてくれたのか。可愛い奴め」

「にゃあ」

頭を撫でると、優しい顔になったような気がした。

飼う事を今だに言っていないのか、それとも許可を得た後なのか。

「ごめんな、ちょっと出るから」

「にゃあ」

気持ちが通じたのか、頭を下げて眠りについた。

随分寝つきがいいものだ。

そういえば、猫の語源はよく寝るという事から『寝る子』だという一説があるらしい。

今、起こしてしまったのかもしれないな。

俺はそっと部屋から出て、ロベリアの眠りを妨げないようにした。
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