学園(吟)
俺は吟ネエの部屋の前に立っている。

「吟ネエ?」

扉をノックしてみるが、返答がない。

いないのかな。

一階に降りてみると、艶々の渚さんと出会う。

艶々度が半端でないところから、耕一さんは相当搾り取られたのだろうか。

「あら、丞さん、体の具合はいかがですか?」

「良くなったよ。それで、吟ネエ知らない?」

「先ほど、出かけましたよ」

一足違いか。

「そっか、どこに行くかとか聞いてる?」

「何も言わずに出て行きましたから聞いてません」

「ううん、困ったな」

「吟さんに用でもあったんですか?」

「ちょっと、ね」

そういえば、渚さんにロベリアの件を話しておかなければならない。

「あの、お願いがあるんだけど」

「猫さんのことですか?」

「知ってるの?」

「ええ、お部屋を拝見させていただいた時に。それと、吟さんにも頼まれたんですよ」

やはり、吟ネエが頼んでいてくれたのか。

俺も、一押ししておいたほうがいいかもしれない。

「そうか。あの、俺からもお願いしたいんだ。ロベリアっていうんだけど、飼っていいかな?世話は俺がするから」

「そうですね。丞さんなら、吟さんの面倒も猫さんの面倒もしっかり見てくれそうですね」

今、何か娘の面倒を押し付けられた感がある。

でも、渚さんから吟ネエの面倒を見ろと言われれば、断るつもりもない。

「もちろん。それじゃあ、俺、吟ネエを探しに言ってくる」

「ふふ、丞さん、避妊をしないと、苦しい事になりますよ」

予想外の事を言われたのでたじろいでしまう。

「えっと、渚さんは、避妊は?」

自分ながらに可笑しな質問をしてしまったものだ。

「ふふ、私は二人目がほしかったところなんです」

今日は、避妊はしていないというところだろう。

というか、俺は伯母さんと何を語らっているのだろうか。
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