学園(吟)
赤城は黒の短髪、身長は俺よりも高く、顔は男前という絵に描いたような人物だ。

そういえば、以前も初めての話をしようとしていたのを遮った思い出がある。

別に初めてだからどうだとか言うつもりなんか一切ない。

いや、吟ネエの初めてはいくつだとかは気になるけれど、大した問題じゃないんだ。

でも、今も繋がりがあるとかというパターンであるならば、少し嫌ではある。

長続きさせるほどの魅力があるという事だからな。

「町で偶然出会ってね。少し話をしていたんだよ」

「そう、ですか」

「吟は以前よりも綺麗になったと思うよ。本当、傍にいられる君は幸せ者だな」

吟、か。

「そうですね」

別に嫌味を込めて言ったつもりなど、微塵もない。

本心を伝えたつもりだ。

それに、下手な勘ぐりなどどうでもいい。

もし、赤城が吟ネエを欲しいというのなら、俺は対抗するだけだ。

俺は俺で、吟ネエが欲しいのだ。

「吟ネエ、ずっと探してたんだ」

「何アルか?」

「二人で話がしたい」

「んー」

虚空を見上げながら、何かを考えているようで、ゆっくりと時間が過ぎる。

急に出てきて、懐かしい話をしてるところを、横から奪い去るのは失礼にあたるかもしれない。

でも、今すぐにでも伝えたかったんだ。

吟ネエは答えてくれるかどうか、不安になっているところで、視線を下げた。

「いいアル」

「本当?」

「アチシは帰って酒を飲みたかったアル」

「はは、相変わらずだね」

赤城は余裕をもって、吟ネエと接しているようだ。

俺が、小さく見えるな。
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