学園(吟)
赤城とは別れ、家に帰る途中。

吟ネエは前を歩き、何も言わない。

俺も深くは考えない。

深く考えたところで、苦しむのは俺だけという事を知っているからな。

「あの、さ、吟ネエ」

「んー?」

「ごめんな」

「お前が神妙な顔つきで話があるというのなら、面白い話以外に何でもないアル」

「別に、面白いってわけじゃないんだけども」

この調子だと、何を言われるか解ったものじゃない。

でも、思い出した事を告げたい気分であった事は確かなのだ。

赤城と出会う以外に、何事もなかった。

「吟ネエ、久々に駄菓子屋にいかない?」

「お前、アチシの乳にモ〇ッコヨーグルトでも塗りたくるつもりアルか?」

「当然、普通に食べるよ」

家の近くの駄菓子屋に足を運ぶと、俺が幼少の時と見た目が変わらないおばあちゃんがいた。

「おお、悪鬼と丞か」

何歳かはわからないが、元気そうである。

「覚えてたんだ」

「ボケてなかったアルか」

「何をぬかすか。あたしゃ現役さ」

怒った様子を見せる事無く、俺達を眺めている。

「なんじゃ、お前等、まだ結婚してなかったのかい?」

「俺はまだ結婚できる年齢じゃないんだ」

何故か、結婚という言葉を出してくるおばあちゃん。

「ふうん、そうかい。まあ、悪鬼となんてやめといたほうがいい。後で恐ろしい目にあうぞい」

「それでもいいよ。俺は吟ネエの全てが好きだからね」

正直な気持ちは、いつまでも変わらない。

俺だけでもな。
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