学園(吟)
お酒を飲みながら、食を進めていく。

頬が微かに赤くなっているようだが、酔った様子はない。

「丞も飲めアル」

「俺は話をしたいから」

お酒が飲めないわけではないが、吟ネエの飲んでる酒は度数がきつい。

酔っ払えば、話など出来なくなってしまうのだ。

「んー、渚達と競いたいアルか?」

舌なめずりをしながら、色っぽさを見せる。

「思い出したんだ。あのバッジの事も、吟ネエに言った事も」

箸を置いて、吟ネエを見る。

「何で傍にいたのに思い出せなかったんだろうと思う」

俺の気持ちは確かな物で、覚悟もある。

「俺、吟ネエの婿さんになりたいって、言ったんだよな」

吟ネエは無言になり、酒を飲む手を止めた。

「今から言う事は、過去を思い出したから簡単に言うわけじゃない」

俺は吟ネエのグラスを持っていない左手を掴んで、目を見る。

「何があろうとも、吟ネエの傍で共に生きたい」

吟ネエは動きを止め、ゆっくりとグラスを机に置いた。

「お前は、早死にするな」

話し方が、過去の吟ネエの物になっていた。

「死にたくないし、吟ネエを長く見ていたいから、出来るだけ長生きできる方法を探すよ」

「アチシが好き勝手しても、お前は我慢出来るか?」

「今まで通りの吟ネエなら、俺は我慢できると思うよ」

「他の男と絡んでいても、か?」

「本心は嫌だよ。でも、吟ネエが少しでも俺といたいという気持ちがあるのなら、吟ネエから目を背ける事はない」

貞操観念なんて感じられないけれど、それが吟ネエだもんな。

何だか、以前も吟ネエと共にいた感覚がある。

今、前世の事なんていうのはどうでもいいか。

「じゃあ、私と寝てもいいと思うか?」

「今なら口で言うだけじゃない。吟ネエの全てが欲しい」

飯時でやる事ではないけれど、吟ネエを抱きしめる。
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