Symphony V
「すみません、少し外を散歩してきてもいいですか?」

近くにいた警官に言うと、思い切りしかめっ面をされて怒られた。

「何を言ってるんだ!外にはマスコミや野次馬がたくさんいるんだ!」

確かに、ずっと外が騒がしくて、時々何かが光るのが見えていた。

「だけど…ここでずっといるの、辛いんです」

気づけばレオンの姿はどこにもなくなっていて、何人かの警官や鑑識に聞いてみたが、姿を見た人は誰もいなかった。


呆れられたかな。…いや、どっちかってーと愛想つかされた、が正解か。


少し自嘲ぎみに笑う唯。
レオンの差し伸べてくれた手を、自分で離した事に少しだけ後悔する自分がいた。


あんなに覚悟を決めたのに。
結局これだもんな。


どこかでレオンがまあだ、自分のことを助けてくれるんじゃないかと、淡い期待を抱いている自分もいた。


往生際が悪いなぁ…


ふぅ、とため息をつきながら、壁にかけてあった時計をチラッと見やる。迫ってくる約束の時刻に、唯は少しだけ焦りを感じていた。

時刻は23時半。約束の場所までは、家から歩いていけば30分ほどの距離にある。


もう出ないと間に合わない。


外出することは許されない。事情を説明すれば、あるいは許してももらえるかもしれないが、一人ではきっと行かせてはくれないだろう。
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