Symphony V
へなへなっとその場に座り込む。

「結局、お母さんが生きてるのかどうか、わかんなかったや…」

うっすらと滲む涙に、顔を空に向けて、これ以上溢れてこないようにする


さっきの、なんだったんだろ。あれが、紅い蜘蛛なの?


さっきまでのやり取りを思い出してみる。

「5年前、家族旅行」

当時の記憶を呼び出してみる。
が、当時10歳の自分の記憶はかなり曖昧で、思い出せることがなにもなかった。


5年前っていったら…どこに行ったっけ?


うーん、と唸る。

と、その時、ポケットに入れてあった携帯が、ピリピリと鳴り出した。

「もしもし?」

鳴っていたのは自分の携帯。着信は知らない番号からだった。

『唯?今どこにいる?』

聞いたことのある声。が、誰だか思い出せない。

「えっと…ごめんなさい、誰ですか?」

おずおずと聞いてみる。

『あぁ、ごめんごめん。キアリーって言えばわかるかな』

「へっ!?」

思わず体が硬直した。

「なっなんで!?」

驚きで自然と声が大きくなる。

『この世の終わりみたいな顔で、うちのバカ息子が帰ってきたからね』

クスクスと笑うキアリー。唯は顔から血の気がひいていった。


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