Symphony V
電話を切った後、唯は涙が止まるのを待ってヒラツカ山を降りた。
ヒラツカ山を降りてすぐのところに、少し大きな広場がある。秋祭りなんかの時期になると、出店がたくさん出て多くの人でにぎわうその場所は、普段はとても静かで、時々、子供たちがサッカーをしたりして遊ぶ場でもあった。

「あれ?…たく…み……くん?」

少し先に、男の子が1人と女の子が2人。男の子の方は巧に良く似ている顔に見えた。が、暗くてあまりはっきりと判別がつかない。

と、そのときだった。

あたりにパーンと乾いた音が響いた。


えぇ!?


女の子は何かを叫ぶと、そのままその場を去っていった。後を追うようにして、もう一人の女の子も走り去っていった。


こ…これは…
世にいう痴情のもつれというやつでわ!?


少しどきどきしながら見ていると、男の子はそのままどさっとその場に座り込んだ。
唯は慌てて走り寄る。

「だ、大丈夫?」

そこにいたのは、やはり巧だった。声をかけられて驚いた後、相手が唯だという事に気づいてまた驚いた。

「な…!なんでお前こんなところに!?つかなんだよそのかっこ!」

巧に言われて、自分が警官の格好をしていることを思い出した。

「や、その…これにはいろいろと事情が…あはは」

笑う唯。怪訝そうな顔をする巧。

「そ、それより!巧くんこそ、こんなところでなにしてるの?」

話題を巧の方へとすり替えようとする。が、巧はそれにはのってこずに、じとっと唯を見つめた。
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