Symphony V
「…おまえさ、コスプレすんのはいいけど、場所を考えてやったほうがいいぜ?こんな田舎でやってたら、すぐに噂になるんだ」

はぁ、とため息をついた後、巧は立ち上がり、手でこいよ、と促した。

「この辺でそんな格好してたら目立つだろ。ジャージくらいなら貸してやる」

「え?あ…うん。ごめん。ありがとう」

へへっと笑う唯に、巧は軽く息をつくと歩き出した。

「で?お前はなんでこんなとこにいんだ?」

聞かれて笑った。あまりにも突拍子のないことになりそうで、喋ることができなかった。

「ま、お前には見られたみたいだし、あんまり格好つけてもしょうがねーか」

ぽりぽりと頭をかきながら、巧が言った。

「さっきのは友達だ。付き合ってくれって言われたのを断ったらしばかれた」

ははっと笑う巧に、唯は目を見開いた。

「いやいや…ふったらしばかれたって…」


なに、それが普通なの?


「俺もさすがに、予想外だったわ」

思い出して笑う巧に、唯は苦笑いを浮かべた。

歩いて数分の場所に、巧の家はあった。

「入れよ」

巧は家の庭に面した部屋の大きな窓を開けて、唯を招きいれた。


えっと………


「お、おじゃまします」

いけないことをしているような気がして、少し、どきどきした。
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