Symphony V
テレビに映ったアナウンサーが、唯の父親と母親の名前を連呼している。

「これ、お前の父ちゃんと母ちゃんだよな」

巧の言葉が、重くのしかかる。
鼓動が速くなり、息も荒くなる。

「お、おい…」

慌てふためく巧。唯ははっと我に返り、涙が頬を伝っていることに気づいた。

「ご、ごめ…」

慌ててごしごしと手の甲で涙を拭く。どうしたらいいものかと、目の前で慌てていた巧は、いきなり唯の頭を自分の胸に押し付けてきた。

「なな…なに!?」

驚く唯に、巧はしどろもどろになりながら答える。

「あの、よ。何があったのかはわかんねーけど、とりあえず、辛いんなら泣いとけよ」

巧の思わぬ言葉に、声が出なかった。

「泣いてるところみられるの、恥ずかしいだろ?」

その言葉に、唯は思わず涙があふれ出てきた。


やだ、泣かないって決めたのに。


止まらない涙。巧が優しく背中をさすってくれる。それがまた嬉しくて、辛くて。唯は思わず巧にしがみついた。
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