Symphony V
ちょうどその記事には写真も載っていた。きれいな顔をした若い女性。

「あれ?この顔…」

「見覚えあるのか?」

「ううん、見覚えがあるっていうか、なんていうか…」

見たことがあるわけじゃないけど、でも、どこかで見た気がする。

「えぇっと…この女性の名前は、高遠ゆかり」

「え?」

巧の言葉に、思わず唯は画面を覗き込んだ。

「たかとお、ゆかり」

稜夜と同じ苗字をした女性が、唯が旅行に行った同じ場所、同じときに亡くなっている。

「この人はどうして亡くなったの?」

唯が聞くと、巧は記事を軽く読んで答えた。

「あぁ…事故死したらしい」

「事故?」

「あぁ、ちょうど花火の時間あたりで家族と離れたらしくて、その後も探していたが見つからなかった。翌日、公園の側の池で遺体で発見されたらしい」

「池…」

ほら、唯、笑って笑って。
えへへ、いいよー!
はい、チーズ!

「どうした?」

また、旅行の時の記憶が甦ってきた。

「ううん、なんでもない」

「そうか?池で発見された女性は、争った形跡もなく、薬物反応も出なかったことから、警察は事故と断定し、捜査は打ち切りになったってさ」


この事故と、今回の事件は、何か関係があるのだろうか。


唯は首を傾げた。
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