Symphony V
巧の自転車の後ろにのせてもらい、唯はとりあえず家へと向かった。

「さて、こっからどうやって家の中に入るかだよな」

家の近所まで来たところで自転車を止めて、唯の家の方をみやった。

田舎の夜にしては珍しくほんのり明るく見える。

「うーん…どうしたらいいんだろ」

ぽりぽりと頬をかく。

「ちなみに、出てくるときはどうやって出てきたんだ?」

「出てくるときは普通に、納屋の窓から屋根づたいに降りてきた」

「なにが普通なんだ…なかなか思い切ったな」

思わぬ方法に、少し驚く巧。唯は不思議そうに首を傾げた。

「でも、そうなってくると、家に戻るのはなかなか難しくなるな」

巧の言葉に、うーん、と唯は唸った。

「…意外とさ、野次馬っぽく見えないかな」

唯の言葉に、巧は頷いた。

「確かに。結構人いそうだし、わかんねーかもな。カップルで野次馬しにきた、って感じか?」

巧の言葉に、唯は思わず目を大きく見開き、顔が赤くなった。巧もハッと気づいて慌てて訂正する。

「いやいや、その、そう見えるから大丈夫じゃねーかなって…そういうことだよ!」

ぶっきらぼうにそう言うと、巧は行くぞ、と歩き出した。

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