Symphony V
「すっげー人だなぁ」

巧は少しわざとらしく、いかにも見物に来ましたというのをアピールする。

「ねぇきみ、ここの家のこと、何か知ってる?」

案の定、マスコミに声をかけられる。
が。

「いや、単に知ってる場所だと思って見にきただけっす」

笑う巧に、さらに質問をしてくる。

「ねね、どうしてきたの?何か知ってることはない?」

と、そのときだった。

「オルトスが出たらしいぞ!」

「なんだって!?おい、場所はどこだ!」

「うちには情報がきてねーぞ!すぐに確認入れろ!」

現場が混沌としはじめる。あちこちで電話をかけまくる人で溢れかえり、マスコミも次々と帰っていく。

「オルトス…?」

少し前に聞いた言葉。唯は驚いた。


ほんとに出ちゃった…


驚いている唯の手を、巧はぐいっと引っ張った。

「おい、唯。今のうちにいくぞ」

巧に言われて唯は周りを見回した。確かにそばにいるマスコミは、今は別のことに気をとられている。家に戻るとしたら今がチャンスだ。

「行くぞ、唯」

言われて唯はこくんと頷いた。見つからないように、そっと警官のそばまで行く。
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