Symphony V
「あの、村儀さん」

電話を終えて、携帯をポケットにしまう村儀に、唯は声をかけた。

「図書館、行ってきてもいいですか?」

「…かまわないが、必ず俺と、いつでも連絡がつくようにしておけ。どこに行くかも、必ず連絡してから行くんだ。いいな?」

言い方は少しきついものだったが、そう言っているときの村儀の目は、とても優しいものだった。

「俺も一緒に行くよ」

唯が部屋で着替えていると、部屋の外から巧の声がした。

「え?」

「その、さ。やっぱり心配だしさ。一人より二人の方が、色々といいと思うんだけど」

唯は返答に困った。

「嬉しいけど…でも…」

命を狙われている自分と一緒にいるということは、巧も命を狙われることになるのではないか。そう思うと、巧の申し出を素直に受けることができなかった。

「大丈夫だって。えっと…村儀さんだっけ?あの刑事さんにもその方がいいって言われたし」

「村儀さんに?」

唯は驚いた。

「蜘蛛の特徴として、ターゲット以外は絶対に手を出さねーらしくってさ。人に見られないようにやるってのもあるから、一緒に居たほうがいいだろうって」

唯は巧の言葉に頷いた。着替え終わり、そのまま部屋の外へ出た。

「巧くん…その、一緒に居てもらってもいいかな」

少し申し訳なさそうな顔をする唯に、巧はにこっと笑った。

「遠慮すんなよ。俺が一緒にいれば、お前は安全なんだから」

巧の言葉に、唯は深く頭を下げた。
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