Symphony V
ぼく、……ちゃんとけっこんする。


ちいさな男の子が、少し頬を赤らめながら言う。


ほんと?……くん。


聞きかえすと、にっこりと笑って頷いた。


およめさんになってくれる?


聞かれてなんだか、胸が熱くなった。


うん!


元気よく答える自分。
大人の真似をして、男の子がキスをしてきた。


ぜったい、ぜったいだよ!やくそくだからね!


男の子が笑って言う。




……くんのおよめさんはわたしだもん!


遠くで小さな女の子が叫んでいる。


にどとちかづかないで!


いきなり、後ろからドンっと突き飛ばされた。




『唯!』





父親の声が聞こえた気がした。振り返ると、真っ白なランプが、唯を照らしながら近づいてきた。
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